今日は紹介してもらった大学病院受診の日。
初診は十時半受付で、診察室に呼ばれたのは十三時過ぎ…。
どんな教授先生なのかと緊張しつつ明るく「こんにちは!」と入室すれど、椅子に座った先生はチラッと私を一瞥しウンザリした雰囲気…。
アラ?挨拶なしなの教授先生?机上にはE病院からの紹介状と検体プレパラートが数枚。これが私の「がん」なのかァ?

ザッと今までの経緯をお話するも、何故かウンザリ顔の教授。あるファイルを開いて
「あなたの場合は、これ。ステージ0のここね。何も治療しなくていいの。98%以上は再発しないんです。残り2%なんて交通事故に遭ったり他の病気になったりするでしょ?そういった患者さん全員にがんの治療をする訳にはいかないでしょ?」
…なんだか…なんだかとってもイヤな感じ!
そんな言い方は無いんじゃないかなぁ!
ステージ0と云われた100人はきっと、その2%にならないよう最善の治療を希望する!
初診の患者に対して別のアプローチはないのか!もしかしてハズレか、この病院?

おもむろにマンモグラフィを見たりプレパラートを光に透かして見ながら
「どこにがんがあるのか、見えないんだよね〜。がんだと紫色になっているんだけど〜。分からない。E病院の先生には悪いけど、もしかしたらがんじゃないかもしれないよ〜。」
ええ〜〜っ!?がんじゃないかもですって〜〜〜〜〜っ!?と、あんぐりしている私に、
「なんで最初っからココに来なかったのぉ!」
お?それがウンザリ顔の元ですな。愕然として言葉の出ない私をよそに、ペラペラと紹介状をめくり、
「あ。この検査結果はがんなのかぁ〜。」
うう〜っ!どっちなんだ?私にとっちゃ命の、人生のかかった一大事なんだぞっ!

「シコリを検査するのに穿刺だと100%良性だと云う結論は出せないと言われて。胸に傷がつくけど全摘してスライスして調べれば確実な結果が出せると言われまして…。」
なんだか言い訳がましい事を言い出す私。でもNドクターは確かにそう言った。針で取れる組織は一部分なので、悪性部分から外れてしまうと小さながんを見過ごしてしまうと…。その時私は「なるほど。」と納得した。
命に関わる事だもの、1%の不安でも取り除いてしまいたいと思うでしょ。そしてすぐ翌週手術の予定となり、あの辛い手術を受けたのだ。

そんな話を教授先生に伝えると、フッと一笑された。
ちょっと頭に来た私は
「じゃぁ、どうしたらイイですか私は!そのままE病院に通院していたら、翌週にはリンパ節を摘出する手術をされ、コバルトを一ヶ月半毎日受ける段取りになっていました。要所要所で担当先生に不安を感じたので先生を頼りにここに来たんですけど!」
と、ストレートに気持ちを伝える。
「…じゃぁ、傷見せて。」
やっと腰を上げてくれたようだ。

上半身脱いでベッドに横になる。エコーで手術した患部をグリグリするので「いたたたっ」と声が出る。
脇の下もグリグリするので「うぐぐぐぐ」と笑いをこらえた。
「脇のボンヤリしたものってのも、分からないんだよね〜。」
とぼやく教授。

診察されながら以前新聞で読んだ記事を思い出した。乳がんだと診断され、切除した組織を調べた病理結果は、実はがんではない事も多々あると云う。
私は、胸に4センチ近い傷がついてしまったけれど、がんじゃなければそれで良かったと思うべきか、無駄な傷を付けられたことで怒るべきか…ま、それはまだ考える時ではないか。

せっかくなので、E病院でもエコーに写っていた左胸のシコリも調べておこうと云う事で、穿刺することに。
頭上の大きなメカにスイッチが入れられ、そこから延びたコードの先に10センチ程もある針が付けられた。
こんなに長いものを刺すのかっ?
教授はエコーモニターを見ながら、
「はい、ごめんなさいね〜。」
と刺した。
…ん?思ったよりも痛みは無いぞ。
白黒のモニターに写る黒丸に針が近づいて行くのが分かる。ブニっと刺さり数回グサグサと動かしている。

この左胸の結果は来週。そして問題の右シコリの検体は、他のドクターと議論するようだ。
ともかく全て来週まで待て、なのだ。

もしかしたら癌じゃないかもしれない…?
なんだか妙な気分だ。いやいや、ぬか喜びになるかもしれないし、安心しちゃいけない。


Brest Oncorogy (乳腺科)
受付に置いてある冊子を手に取った。乳がんの健康セミナーの記事があった。山田邦子さんと数名のコメント、そして教授先生もパネリストで参加していた。
がん患者サービスステーションのパンフレットもある。
乳房切除した方専用のブラジャー、抗がん剤による副作用で悩む方のカツラや、精神安定の為のアロマテラピー等々…今もがんと戦っている方とその家族が沢山いると云う現実を、思いっきり身近に感じた。
胸が苦しい…。

今までの人生で全く知らなかった世界がそこにあった…。