午前中に仕事をして、昼から絶食。水分は少量オーケー。
夕方4時過ぎに病院へ入る。
手術着に着替え、午後4時30分「右乳腺腫瘤(みぎにゅうせんしゅりゅう)切除術」開始。台に横になると、冷た〜い消毒を胸部全体にされ、あれよあれよと云う間に身体中ブルーのシートで覆われていき首から下が全く見えなくなった。そう、今回の手術は部分麻酔の為意識はずっとある。あって欲しくないのに、頭は冴えている。最悪だ。
ふとグレイズアナトミーでよくあるシーンを思い出した。あの生々しい手術の映像を…
「すみません、麻酔を多めでお願いします!」ビビったわたしは看護師さんにお願いした。
 チクッと麻酔をされる。だんだん触られていることも解らなくなってきた。暫くしてドクターが“何か”器具を持って“何か”した。
「これ痛いですか〜?」と聞く。
「いえ、大丈夫です…(汗)」お、お主!今何をした〜〜?ともかくイヤな想像ばかり働き始める私。でも仕方ない、ここはドクターに任せるしかないのだ。麻酔が効いていても引っ張られる感じはよく判る。ピーーと云う機械音と共に、電気メスを使っている。電気メスは出血が少ないそうだ。でも皮膚が焦げて香ばしい香りが漂ってくる。
またしても、最悪だ…!
「何か楽しいことでも考えて。」と、看護師さんは云うが無理無理!だったら何か話題を提供してほしい。
手術室には私とドクターの他に看護師さんが2人だけ。へんな空気が漂う。

徐々に痛みを感じ始めて来る。
「痛いです。」と云うと、ドクターは意外そうに、
「え?これ〜?これは?」と、痛いと言っているのにイヤなお試しをされる。麻酔を追加したらしい…
手術って何をするかいちいち口に出して進めるもんだと思っていたけど、ドクターってそんなに口頭指示しないんだね。
そして今度は徐々に熱さも感じはじめてきた。
「熱い感じがします〜!」と訴えるも、反応がない。無視?もう少しだから頑張ってとか励ます事もなし。器具を腹部あたりにガチャガチャ置かれたりする(汗)。ドクターはしきりに「圧迫して!圧迫して!」と言い出した。止血してるのだなあと思っていた矢先、突如激痛!
「痛っっっ!」思わず大きな声が出る。
「え?これ痛い?う〜ん……」と不満げな様子。おそらくもう後半なのだろう、麻酔を追加した気配なし。私は恐怖で体中に力が入るっ。歯を食いしばり、深呼吸して落ち着こうとした!早く終わってくれ〜っと祈った!

そろそろ糸で縫っているようだ、動きで判る。でもビリッと痛い!
「ヴッ!イッタ〜〜!」と涙を浮かべて言うも、ドクターは悪びれもせず
「あ〜、じゃあコレも痛いかも。」と言ったきり糸を皮膚に刺し、ツ〜〜っと縫い続けている。我慢して当然のことじゃないよね、コレは…拷問だぁ。

手術終了後、私の右胸には15センチ角のガーゼが張られていて、縫った傷は見えません。
「何針縫ったんですか?」と聞くと、それには答えずぶっきらぼうに
「溶ける糸なので抜糸はありません。」との返事。なんだか機嫌が悪いのかしら?なじぇ?

切除したものを見せてもらった。透明の袋に入れられたソレは、白っぽくで一部赤黒い。触るとフカフカしていた。そのフカフカ(脂肪)の中に、パチンコ玉のような固いものがあるのが判った。
こ、これかぁ……

ヨロヨロと更衣室に戻り鏡を見ると、顔は脂汗でテカテカ……
病院を出て、薬局にて処方された薬をその場で飲む。麻酔が本格的に切れる前に痛み止めを身体に入れた。

家に戻ると、子供の元気な声に気持ちが持ち上がってきた。我が家っていつも同じ空気で迎えてくれる、本当にありがたい場所だ。
「悪いトコ取ってきたっ。」と主人に報告した。
彼は子供の前では心配を顔に出さずに、うまく誘って子供とお風呂に入ってくれた。